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災害対策基本法の改正を生かした防災と地域活性化 vol.4

今回の専門家

山崎 栄一 氏
関西大学
社会安全学部 教授

個別避難計画の進め方

まず、要支援者の個別避難計画を作る際には、そもそもどこにどういう高齢者や障害者がいるのかを知らなければ出来ませんが、その手掛かりになるのが「避難行動要支援者名簿」となります。その情報を地域に提供して、地域の人たちが支援を必要とする高齢者や障害者に直接アプローチして、協力し合いながら個別に避難計画を作っていくというのが本来のあり方ですが、この度の法改正では、言ってみたら基本的には全ての要支援者に対して個別避難計画を作らなければいけなくなりました。

しかしながら、同じ市町村の中でも温度差があり、非常に大変な問題です。コミュニティが活発な地域では既に個別避難計画まで出来ている所もあるかもしれませんが、リスクが実際にある所、災害はあまり起きそうもない所もあって、いろいろな地域の特性も考えながら進めていかなければならないのに、法的には全ての支援者に対して個別の計画を作る必要があるということになっています。一応はこの個別避難計画作成については、取り組み指針が設けられていて、優先度を分けて取り組みを進めていくことにはなっています。

特に災害リスクが高いような地域については、市町村が率先して個別避難計画を作らせるという所と、そうでもない所はこれまで通りに地域の人に情報を提供して地域ぐるみでやってもらうというような、これまでのスタイルでやっていく部分と2つに分けています。特に今回の目玉は、市町村が率先して優先的に個別計画、避難計画を作っていくというところで、その際福祉専門職の人の活用を念頭に置いています。

ここで言うと、いわゆるケアマネジャーさんや相談支援専門員といった人は普段から福祉計画を作っているわけですので、その延長線上で個別避難計画についても1件あたり何千円か報酬を出して作ってもらって進めていくというスキームになっています。しかしながら、ケアマネジャーは災害のことについては、専門ではなく、突然そういう仕事も降り掛かってきてしまうと大変な作業で負担も大きいため、まずは福祉専門職の人たちに対して個別避難計画のあり方や災害対策も含めて、また新しい知識やスキルというのを身に付けてもらわなければいけないという課題が生じてきます。

先ほど個別避難計画をどんどん市町村の中で作っていくことが必要だとお話ししましたが、全部が全部いきなりできるわけではないので、優先順位を考えていく必要があると思います。優先度の高い、災害リスクの高い所については、特に福祉専門職の人を付けてどんどん進めていくことを目指しますが、福祉専門職の人は書面で計画書を書くのは専門家かもしれませんが、災害や避難については専門ではないので今後は、研修を行い、スキルを付けていってもらうことになっています。

ただ、実際に避難を支援するのは誰かというと、地域、コミュニティです。要支援者本人と一緒になって計画を作ってくれる福祉専門職の人がいてくれたとしても、コミュニティがきちんと避難支援できるように、コミュニティにアプローチしてコーディネートできる人が必要になってきます。その体制がないと、この個別避難計画の作成は進みません。とりあえず、福祉専門職が付くことについては、みんな分かっているのですが、その大前提として、やはりコミュニティがしっかりしていて、それをサポートする人は誰なのかをきちんと決めておかないと、絵に描いた餅になりかねないという危険性があります。そのあたりの役割分担をきちんと決めておく必要があります。そして、再確認しなければいけないのは、避難させる主役は、あくまでも「地域だ」ということです。そこに、福祉専門職がサポートで付くのであって、やはりそこはきちんと理解する必要があります。

この地域というのは、コミュニティのことです。コミュニティにおいて、そこにいるキーパーソンをきちんと把握して育成することが大切で、コミュニティに対する働き掛けも非常に大事です。そのためにもしっかりとしたコミュニティを平常時からある程度活発にしておく必要があります。私の経験則から言うと、地域ごとにお祭りやイベントなどをやっている所は非常に強いものがあります。コロナ禍でだんだん縮小されてしまった部分はありますが、地域の活性化のためにもまた復活していくといいと思います。そして、個別避難計画を立てていくことで、地域自体の活性化に結び付いていければ非常にいいことだと思います。

今後は個別避難計画を作成していく過程で、地域がやらなければいけないということも含めて、私自身も地域や行政にアドバイスしていきたいと思っていますが、個別避難計画の作成を促進するためのヒントになるテキストを書いており、2023年にぎょうせいから出版される予定ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。出版された段階では「山崎栄一」で検索していただければ出てくると思いますので、ぜひご覧下さい。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。