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災害対策基本法の改正を生かした防災と地域活性化 vol.3

今回の専門家

山崎 栄一 氏
関西大学
社会安全学部 教授

「緊急安全確保」の際の「福祉避難所」について

災害対策基本法の法改正の概要について、「緊急安全確保」のメッセージを出すということの他の改正内容についてもお話ししたいと思います。その一つに、「福祉避難所」の公示というものがあります。「福祉避難所」というのは、高齢者や障害者の人が避難することが予定されている施設のことですが、なかなか福祉避難所というのはこれまで整備されてこなかったところがありまして、災害対策基本法の施行規則というレベルの法改正の中で、「福祉避難所はここにあるんだ」というのをきちんと公示するようにしました

その際に、公示するだけだとみんなが殺到するかもしれないので、「この福祉避難所は高齢者の人向けですよ」とか、「障害者の人向けですよ」というふうに、受け入れの対象者の特定もできるようにしています。今後は個人個人に対して、何かあったときはここの福祉避難所に行けばいいということを事前に示していければいいのではないかと思います。

そのために、まずは避難支援体制を作る中で、福祉避難所とのマッチングというのを進めて行くということが望ましいとされています。今までは、災害が実際に起こらないと災害救助法は適用されず、本格的な活動ができなかったのですが、この改正により、国の災害対策本部が開設される前、災害の恐れのある段階から災害救助法の適用が可能になりました。

そうすると例えば巨大な台風が2、3日以内に来るというような場合でも、災害が実際来る以前に避難所などを立ち上げて事前に避難することも可能になりました。このような数日前の避難になると極めて広域な避難になりますので、自分の住んでいる市町村、あるいは都道府県を越えた避難になり、受け入れ側の地域と協議を行わなければならなくなりますが、この協議も事前に行えるように法改正がなされました。

「個別避難計画」の推進

今回の法改正により、「個別避難計画」の作成が市町村長に義務付けられました。前回出演した時にもお話ししたことですが、これまでは高齢者や障害者の方について、早めに行政や地域で情報を把握して避難体制を作っておくために「避難行動要支援者名簿」の作成をすることが2013年に義務付けられ、その名簿をもとに実際に地域の人が、支援を必要とする人に実際にアプローチをして、「どうやって逃げたらいいのか」「どこに、どういう方法で逃げたらいいのか」ということを相談して個別に計画を作りましょうという話でした。

しかしながら、名簿の作成は義務付けられたのですが、個別の避難計画がなかなか進まなかったという現状がありました。今回の災害対策基本法の改正では、名簿を作るということに加えて、市町村は要支援者一人一人の個別の避難計画も作るということが法的に義務付けられるようになったということです。

この「個別避難計画」を作る前には、まず地域にいる避難が難しい人の名簿が適切に作成されていることが大事です。サブワーキンググループでも、この要支援者の名簿というのはどういう位置付けであるべきかも検証されました。名簿である以上は、そこにピタッと支援を必要とする人が書かれていなければならないということは分かりますが、この名簿は介護保険や障害者台帳から抜き出してとりあえず作っている名簿なので、掲載されている人は、あくまでもその候補者にすぎません。支援を必要とするかもしれないという候補者の名簿なので、基本的には広めに対象を取っておいて、実際に会ってから支援が必要かどうかと絞り込みをしていったらいいのではないかと私は思っています。

支援が必要な方をもれなく助けるための名簿という位置付けで理解してもらえばいいのですが、実際にこの名簿を見ると、「なんでこんなにたくさんの人を助けなければいけないんだ」ということで、地域から拒絶反応が起こることも多いようです。まずは、このような名簿の作成が市町村に義務付けられたのですが、これから個別避難計画を作る際には、名簿が果たして実際に必要な人をきちんと反映できているかどうかをそれぞれの市町村でしっかり検証しなければいけないと思います。まずは、出来上がった名簿をしっかりと再検証した上で本格的な個別避難計画の作成に向けて市町村がさらなる働き掛けをしていただければと思っています。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。