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災害対策基本法の改正を生かした防災と地域活性化 vol.1

今回の専門家

山崎 栄一 氏
関西大学
社会安全学部 教授

プロフィール

私は関西大学で、法律の、中でも災害法制を専門として研究をしています。私が研究を始めたきっかけは阪神淡路大震災で、その当時、神戸大学で法学研究科の修士2年でしたが、この地震をきっかけに、災害、特に被災者支援の法律について研究をするようになりまして、現在に至っています。

以前、2018年5月にこの番組に出演した時には、東日本大震災を契機に改正された「災害対策基本法」についての話をテーマに、災害時には、高齢者や障害者の方が逃げ遅れることがあるので、事前に行政が情報を把握し、地域と一緒に情報共有して、いざとなったときに避難ができるような個人情報の把握を含めた避難支援の話をいたしました。しかし、時間の経過とともに、被災者支援のあり方も、当事者からの希望も少しずつ変わってきまして、いろいろなところから「こういうことをしてほしい、ああいうことをしてほしい」というお願いが回ってくるようになりました。それで最近は特に、被災者支援プラス個人情報を踏まえた研究をしております。

前回出演(2018年5月)以降の法改正

前回の出演以降になされた法改正について順を追って説明をしていきたいと思います。
まずは、「災害救助法」の法改正です。この改正のきっかけになった出来事は、2018年に大阪府高槻市などを中心に発生した北部地震です。実は、前回収録の翌日に発生してしまいました。当時、私はまだ横浜にいたのでその日は帰れませんでした。この地震では、家屋が全壊した世帯はあまりなかったのですが、半壊や一部損壊世帯が非常に多くありました。その後も大きな風水害が続きまして、家屋の全壊ではなくても、半壊世帯や一部損壊世帯も大変なのではないかという話が出てきました。それまでは、災害救助法では、家屋の全壊、半壊の際には修理してくれていましたが、法改正されたことで、もう一つカテゴリーを増やして、準半壊という新しい基準を作って、修理できる範囲を拡大しました。

もう一つは、「被災者生活再建支援法」の法改正です。家が全壊したら最大300万円もらえるという仕組みがあるのですが、これも大規模半壊という基準に当てはまる住宅にまでしか支給されませんでした。これについても、中規模半壊という新しい区分を作って、支給範囲を拡大し、少しずつでも被災者支援を進めていくようになって来ております。

このように、被災者支援の普及範囲が拡大してきましたが、この後もさらに風水害が続きました。平成30年には7月豪雨、「西日本豪雨」があって、岡山県倉敷市あたりで大きな被害が出ました。さらに令和元年に台風19号による「東日本豪雨」があり、複数県にわたる土砂災害と台風による土砂災害のうち過去最大級の台風でした。中央防災会議によって、既に避難情報というのは見直しが図られてきています。災害が起こった際の避難情報として出される「緊急安全確保」というネーミングが今は定着しているのですが、このネーミングが決まるまでには、さまざまな候補があって、「各自避難」や「緊急生存確保」など、「とにかく危険が切迫しているので、自分たちで判断して動いてください」ということを伝えるネーミングをどうしたらいいかということが、ワーキンググループの中で結構議論されました。

正式名称で言うと、「令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」という長ったらしい名前のワーキンググループが立ち上げられまして、そこでは、「どのタイミングで避難情報を出したらいいのか」、あるいは「高齢者や障害者の人たちをどう避難させていったらいいのか」などが議論され、特に巨大な台風が来るというのが2、3日前に分かっている時には、これまでの逃げ方とは違って、2、3日前からバスなど、さまざまなものを使って遠くに逃げておくという「広域避難」などのテーマについて、いろいろ議論がなされました。これはワーキンググループだけではなく、さらにサブワーキンググループというのを立ち上げて検討されました。このような過程を経て、2年ぐらいかけて議論されまして、その結果、令和3年5月に「災害対策基本法」の改正がなされました。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。