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世田谷美術館「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展レポート

世田谷美術館「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展mv

2021年3月から世田谷美術館で開催されている「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」展を訪ねてきました。

本展示は二人が出会い公私共にパートナーとして協働を始めた1924年から、アイノが亡くなる1949年までの25年間にスポットが当てられています。

今まであまり多くを語られることのなかったアイノの功績、また二人の過ごした日々について、たくさんの貴重な資料や映像、ジオラマで私たちに伝えてくれます。

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展示室に向かう道すがら、アアルト作品でコーディネートされたコーナーに目を奪われる。

図面・スケッチや家具、プロダクトデザインが並ぶ圧巻の展示内容

本展示は7つのチャプターとエピローグで構成されており、二人の軌跡を年代順に辿ることができます。
そこには実際の図面・スケッチや家具、建築模型、プロダクトデザインが並び、見る者を圧倒!

世田谷美術館「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展02

1930年に開催された「最小限住宅展」では、4〜5人向けの小規模アパートのレイアウトを展示。女性の社会進出とともに管理維持しやすい住宅が求められていく中で、家族それぞれの生活、活動をしやすい住宅を提案されています。

机の下に収納できるキャスター付き引き出し、折りたたみ式ソファーベッド、スタッキング可能な椅子……今でこそ当たり前になっているけれど、当時には珍しいもの。
アアルト夫妻の生活改革の始まりです。

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そしてアアルトデザインと言えば、こちらのアームチェアを挙げる方も多いのではないでしょうか。
本展示ではアームチェアの成り立ちや製作工程を図面や映像で知ることができます。こんな貴重な機会はなかなか無いと思うので、ぜひ映像までじっくり観ていただきたいです!

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美しい曲線をつくるため、「L-レッグ」という加工技術が生まれた

使う人に寄り添う建築、インテリア

展示を通して、アアルト夫妻はどんなものを作るときも「利用者が心地よく使える」ことを大切にしているということを強く感じました。

たとえば1933年に完成したサナトリウム(結核療養所)では衛生的なことはちろん、患者の社会的、心理的欲求を満たされることが考えられています。

寝ている人の顔に直射光が当たることを防ぐ壁、冷えた空気が入らないように抑制するガラス、同室者に迷惑をかけないように清流を求めて開発した手洗器、角を丸くし見た目も手触りも優しい収納……。

どれをとっても機能的でありながら、温かさを感じるものです。

アイノは社会貢献にも強い関心を持ち、子どものための空間もデザインしました。
小さな頃から自然と、考え尽くされたデザインに囲まれることは子ども達に良い影響を与えてくれそうですよね。

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日本初公開ファミリー・コレクション

展示の最後には、アルヴァとアイノのごくプライベートなコレクションが並びます。
学生時代の習作ノートや旅先でのスケッチ、家族の写真、アルヴァが描いたアイノの臨終のスケッチ。
臨終のスケッチからは溢れんばかりの愛情を感じ、強く胸を打たれました。

ここには二人が長い時間を共にし、同じ眼差しで歩んできたことが詰まっています。
お互いが良い影響を与え、二人三脚でたくさんの素晴らしい作品を生み出し、暮らしていたんだなと感じました。

世田谷美術館「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展09

おわりに

私はフィンランドや北欧デザインに興味があったので、今回の展示を、始まる前からとっても楽しみにしていました。そして展示を通してすっかり「アアルト夫妻」のファンになりました。とても愛情深く、社会のことを真面目に考え、自分たちにできることを実行に移してきた、すばらしい夫婦だと思います。

また、アアルト夫妻を通してフィンランド・北欧の社会的背景を知ることができ、こちらもとても興味深いものでした。

紹介したい見どころはまだまだたくさんあるのですが、紹介しきれないほど盛りだくさんで充実の展示。見る人によって感じ方、注目する箇所も変わると思います。

本展示は6月20日(日)まで開催予定です。
新緑が美しい季節、美術館後は砧公園でゆっくり緑を見るのも良いですね。
館内の窓から見える景色もまた綺麗なんですよ。

皆さまも、二人の軌跡を辿りに世田谷美術館に訪れてはいかがでしょうか。

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※新型コロナウイルスの感染症拡大抑制のため、チケットは日時指定予約制。入館時の検温や手の消毒、マスク着用、館内の消毒などの対策も講じられています。
来場される皆さまも、人との距離を取る・会話を控えるなどの対策をしながら楽しんでいただければと思います。

※画像は許可をいただき撮影しています。


▼世田谷美術館副館長・学芸部長の橋本善八さんにお話を伺ったこちらの記事もぜひご覧ください。▼

展覧会概要

世田谷美術館「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展10

展覧会名:アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話
会期: 2021年3月20日(土・祝)~6月20 日(日)
開館時間:10:00~18:00(最終入場は17:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝・休日の場合は開館、翌平日休館)
※5月3日(月)は開館、5月6日(木)は休館
会場:世田谷美術館 1階展示室

※新型コロナウイルス感染症拡大抑制のため、2021年4月25日(日)から2021年5月31日(月)までは臨時休館となります。2021年6月1日(火)からの再開を予定しています。

※チケットは日時指定予約制です。詳細はWEBサイトをご確認ください。

世田谷美術館

■住所
〒157-0075 世田谷区砧公園1-2

■電話番号
03-3415-6011

■開館時間
10時〜18時(展覧会入場は17:30まで)

■休館日
月曜日(祝祭日の場合はその翌平日)

■URL
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/

■アクセス
東急田園都市線用賀駅徒歩17分、用賀駅より美術館行バス「美術館」下車徒歩3分

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あらかじめご了承ください。