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命を守るための「子どもの救命法」 vol.4

今回の専門家

日色 幸生 氏
フリーランス救急救命士

何気ない日常は宝物

私は23年間、消防士として、救急救命士としていろいろな現場に出動してきました。その中でたくさんの現場を経験させていただいて、思うところ、感じることがたくさんありました。それで感じたのが「何気ない日常は宝物なんだな」ということです。救急隊をやっていると、やはりいろいろな交通事故の現場や、急に人が倒れたというような、本当に命に関わるような現場に行って、実際命が助かった場合もあるけれど、命が失われたというところもすごく見てきました。その中で、自分にこのような緊急事態が今日起こると思っていた人は、ほぼほぼいません。本当に日常普通に暮らしていて急にそういった緊急事態が起こるもので、その時になって「なるほど、こういうことって起こるんだな」というのを実感するものです。

子どもの救急においては、本当に印象深いものがたくさんあって、中でも生後2週間の赤ちゃんの心肺停止の現場では、お母さんが現場にいて、着いた時にはお母さんが心肺蘇生法を一生懸命やってくれてはいたのですけれど、残念ながらその赤ちゃんは亡くなってしまいました。そのお母さんの顔や赤ちゃんの表情は、いまだに忘れられなくて、ずっと鮮明に覚えています。その救急の現場の後、仕事が終わって自分の家に帰った時に自分の子どもの顔を見た瞬間、私は号泣してしまって、「本当に子どもがこうやって普通に生きていてくれていることって宝物なんだな」ということをすごく思いました。

私はそういったいろいろな現場を経験させていただいて、一般の方よりもそのようなことを多く経験していますので、自分だからこそ伝えられることがあるのではないかということでフリーランス救急救命士として、いろいろなことを伝えていきたいと思っています。

子育てをしているといろいろ大変なこともあります。私は子育て中のお父さん、お母さんたちに救命法を伝えているのですが、日常子育てをしているとイライラしたり、たくさん大変なこともあると思うのですが、生後2週間で自分のお子さんを失ってしまったお母さんは、子どもにイライラすることすらできなかったんだろうなということを思うと、子どもにイライラできることですら、もしかしたら幸せなことなのかもしれないなということを、私は強く感じています。

「やり方」と「あり方」

私は今、フリーランス救急救命士として、子どもの救命法をお父さんお母さんたちに広めていくための活動をしているのですが、その講習「ママパパの救命幸習」で伝えていることの中で、大事なものが2つあります。それが「やり方」と「あり方」です。
「やり方」というのは心肺蘇生のやり方だったりとか、窒息の解除法のやり方だったり、あとはその知識の部分です。これが「やり方」になるんですけれど、もう一つ大事な部分、「あり方」というのを私はとても大切にしています。

「やり方」を学んでできるようになったとしても、それを自分がどうあるか、日常からどういうふうに心掛けているかという「あり方」について、ここがしっかりと定まっていないとせっかく学んだことも緊急のときには頭が真っ白になってしまったりしてできなくなってしまいます。それと、一度学んだとしても「本当に大事だよ」ということがきちんとふに落ちていないと、どんどんどんどん忘れていきます。

講習をやった次の日に何かあったときは必ずちゃんとできると思います。でも3カ月後どうでしょう、半年後どうでしょう、1年後どうでしょうとなったときに、もうどんどんどんどん忘れていってしまうものです。それでこの「あり方」、「子どもの命を守るために親としてどうあるべきか」というのがとても大事になってくると思います。その一つの「あり方」として、私が伝えたいこととして、先ほどもお伝えした、「何気ない日常は宝物なんだと思える自分である」ということがとても大事だと思っています。

子どもを育てることは、命を育てることです。命というのは生と死があって初めて命です。私たち親は子どもが死ぬということを想像すらしたくないから、普段そういうことは、なるべく考えないようにしようとしています。でも命を育てるということは、子どもの未来を見るということも大事ですが、もしかしたら子どもが命を落とすようなことがあるかもしれないということにちゃんと親として向き合うこともとても大事で、その死と向き合うことによって「あっ、そういうことがあったときに救命法がとても大事だな」というのがふに落ちてくると思います。

そうすると、普段から習ったことを復習しようとか、いつでもできるように心構えを持っておこうというふうになっていくと思うんです。ですので「やり方」だけではなくて、「きちんと自分のあり方をしっかりと立てていく」ということが本当に大事だと思っています。

私は、公務員という安定した職を辞めて、今までお話ししてきたようなことを皆さんに伝えていきたいという覚悟をもって、現在フリーランス救急救命士として活動しています。消防署の救急救命の講習でもきちんと学ぶことが出来ますが、私はそれ以上に熱量をもってやっていますので、ぜひ私の講習を受けていただきたいと思っています。熱量が違いますので、伝わるものも全く違います。私の救命講習に参加して涙を流している方もいらっしゃいます。

それは、熱量を持って、やはり「あり方」を大切にしているからで、この「あり方」をしっかり落とし込んでいくことを伝えていきたいと思っています。ぜひ私の講習を受けていただきたいです。主にインスタグラムで発信していますので、インスタグラム、あるいはGoogleで「救急救命士日色」と検索していただければ、私のアカウントが出てきます。ぜひこちらをご覧いただき、ご参加いただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。