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命を守るための「子どもの救命法」 vol.2

今回の専門家

日色 幸生 氏
フリーランス救急救命士

覚えておいてほしい「119番通報のコツ」

119番通報というのは日常的にするようなものではないので、通報したことがない方の方が圧倒的に多いのですが、119を押せば消防署につながるというのは皆さんイメージできていると思います。ただ、実際に電話がつながった後にどんなことを話したらいいのかというのはなかなか皆さんイメージできないと思うので、今日はその119番通報する際のコツを伝授します。

まず119を押すと消防の指令センターにつながるようになっています。そうすると指令センターの指令員がどんどん質問をしていくので、その質問にただ答えていくというふうにしていただければOKです。電話がつながった瞬間、消防署から「火事ですか?救急ですか?」という質問がまずあります。もし火事だったら「火事です」、救急車の要請だったら「救急です」というふうに言っていただければいいです。

この場合は「救急です」と答えると、「場所はどちらになりますか?」という質問がきます。そうしましたら、その救急車が来てほしい住所や外であればどういう場所か、近くにどんな目標物があるかなどを伝えていただければOKです。今はGPSがかなり発達しているので、おおよその場所は119番通報がつながった時点で、指令センターの大きな画面にその場所が出るようになっていますので、そんなに焦らずに安心して伝えてください。場所を聞かれた後に、「誰がどうしましたか?」というふうに聞かれますので、例えば「私の子どもが転んで頭を打って血を流しています」とか、その状況を伝えていただければ大丈夫です。その後も必要な情報があれば指令センターの指令員が質問をしていきますので、その質問に答えればいいということです。

119番通報の際のコツの1つとしては、「質問にただ答える」、コツの2つ目としては、「こちらから喋り出さない」ということです。指令センターの指令員は必要な情報を一番早く聞ける順番で聞いてきますので、質問されたことに対して、ただ答えれば大丈夫です。こちらがワァーと喋ってしまうと、必要ないことまで話してしまって、逆に時間が遅くなったりしてしまうので、「指令センターの質問にただ答える」「こちらから喋り始めない」という、この2つを意識していただければ、119番通報はきちんとできると思います。

それともう一つ、119番通報をした際に、電話を早く切った方が救急車が早く出動してくれるのではないかと勘違いしている方が結構いらっしゃるのですが、これも間違いです。消防署に電話がつながった時点で、「どこどこで救急入電中」というような予備指令が消防署に流れます。電話がつながった時点で救急隊はすでに準備を始めているので、電話を早く切ったからといって、より早く救急隊が出動するということはありませんので、落ち着いてゆっくり指令センターの指令員の質問に答えていただければ大丈夫です。

救急の現場における「自助、共助、公助」

防災においては、「自助、共助、公助」という言葉は非常に有名ですが、一般的にはまだまだ知られていない言葉なのかもしれません。「自助」というのは何か災害や緊急事態が起こったときに、簡単に言うと「まずは自分でどうにかする」ということです。「共助」というのは、「その場に居る人たちで助け合って何とかする」ということで、「公助」というのは「消防署や公的な機関がその場に来て助けてもらう」ということなのですが、普段の救急の現場においても、例えば子どもがけがをした、交通事故に遭った、急病で意識がなくなったとか、そういったときもこの自助、共助、公助という考え方がとても大事です。

まずはその場にいる親が子どものために何ができるか、そしてその場に居合わせた周りの人とどうやって協力して子どもの命を助けるか、そして公助、救急車が到着してからの活動という形になるのですが、119番通報をしてから救急車が到着するまでに平均8分間かかるということですので、公助が来るまでの8分間で、どれだけのことが自分たちでできるかというのがとても大事になってきます。

日常的にもこの自助、共助、公助というのはとても大事なのですが、特に大きな災害に見舞われたときには、さらにこれが大事になってきます。消防署の体制というのは、普段は日常に多い災害や救急に対応できるようになっています。もちろん大災害にも備えているのですが、マンパワーの問題や予算の問題で、本当に未曽有の大規模な災害になると、意外と消防署というのは力を発揮できなかったりもします。普段だったらすぐに来てもらえるけれど、大きな災害のときには救急車や消防車の到着が大幅に遅れてしまうということが起こってきますので、応急処置の方法や防災の知識をきちんと親が身に付けておいて、公助が来るまでの間、子どもの命をつなぐということがとても大事になってきます。

特に子どもの場合は、自分からどこかが悪いということをなかなかうまく伝えられなかったり、大人と違って一気に具合が悪くなることも多いので、そのような際の対処方法を知っておくことがとても大事です。事前に講習などを受けて知識を持っておくことも必要ですが、講習を1回受けたとしても、すぐに忘れてしまいますので、常日頃から救命法に目を向け、自分の中に落とし込んでいくということが、子どもの命を守るためには必要になってきます。

私も「ママ、パパのための救命幸習」ということで、子どもの救命法を子育て中のお父さんお母さんたちに学んでいただくためのリアルな講習会をしていますし、最近ではズームなどでもできるようになってきて、オンラインでの講習会もやっていますので、私のインスタグラムに直接ダイレクトメールを送っていただければと思います。これがフリーランス救急救命士の強みで、個人的にも講習を行いますし、何人か集めていただいて講習を行うことも可能です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。