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災害対策基本法の改正を生かした防災と地域活性化 vol.2

今回の専門家

山崎 栄一 氏
関西大学
社会安全学部 教授

「災害対策基本法」の改正内容の概要

令和3年の災害対策基本法の改正について、どのような改正がなされたのかというと、まずは「避難情報の見直し」です。皆さんもご存じだと思いますが、これまでは避難となると「避難勧告」と「避難指示」というふうに2段階で避難情報というのを出してきていたのですが、特にそれを一緒にして、「避難勧告」で出す場合も「避難指示」ということで一本化したというのが、避難情報の見直しの中でも目玉の法改正内容となります。

ただこの「避難指示」というのはあくまでも指示であって命令ではありませんので、やはり自分自身で判断して行動していく必要があります。一本化したからといって必ずしもみんなが逃げてくれるわけではなくて、逃げるにあたっては、ある程度前もってテレビやラジオの情報を聴いて、逃げる準備をして、「さあ逃げるぞ」というような形で、段階ごとにどんな行動をしたらよいかをそれぞれの人が事前に想定しておかないと動けませんし、自分が住んでいる地域がどういうリスクがある地域なのかを事前に認識しておかないと、避難情報にもつながりません。

法律が変わったからと言って、それによってすぐみんなが逃げてくれるわけではないので、このあたりは私たちも含めて、地道に働き掛けをしたり、気付きを進めていく必要がありますし、全国的に周知をしていく必要があると思います。今後も地域の避難訓練などの場面において、「避難指示」が一本化されたことが周知されると思いますし、それをきっかけに、地域の災害リスクや災害時の備えについて考えてもらいたいと思います。

さらに避難情報の見直しについてですが、避難指示の後、災害が起こってしまった後に、これまでは、「避難指示」を出して、「逃げてください」という呼び掛けをした後、実際災害が起こったら「災害発生情報」を出していましたが、この「災害発生情報」が出た際には、何をしたらいいのかが見えてこなかったので、「レベル5」、既に災害が発生した段階でのネーミングを変えようという話になりました。結局「災害発生情報」という言い方ではなく、「緊急安全確保」というメッセージを、災害が発生した場合には発することになりました。

要するに「発生しました」ということを伝えるだけではなく、「緊急安全確保」ということを伝えることで、「自分自身でできるかぎりの安全確保をしてください」という、アクションに対するメッセージを投げ掛けるようにしたというのも一つの改正内容です。

これらの避難指示の一本化や、緊急安全確保というメッセージを伝えることも、災害対策基本法の条文を改正することで、実現されたこととなります。

避難情報の警戒レベル

実はこの避難情報については、1~5の「警戒レベル」というものがあります。レベル1は、「注意喚起」というようなレベルですが、レベル5になると、既に災害が発生しているというレベルになります。先ほど説明した「避難指示」というのは、レベル4なのですが、法改正される前は警戒レベル4の中に、「避難勧告」と「避難指示」というものがありましたが、改正後は、警戒レベル4になったらもう「避難指示」ということで、一本化するという改正内容でした。さらに実際に災害が発生してしまうと警戒レベル5になり、災害が発生してしまったときには以前は「災害発生情報」を発していたのですが、「避難しろ」と言った後で、実際に災害発生した際の情報については、「緊急安全確保」というメッセージを伝えるということになったわけです。

この「緊急安全確保」が出たときには、既に災害が発生しているので、自分たちで判断して、逃げる必要があれば速やかに逃げたり、自分が安全な所にいるのであれば、そこに留まるなど、「各自の判断で安全を確保するために行動してください」というメッセージだと理解していただければいいと思います。このネーミングについても、サブワーキンググループの中ではかなり検討されまして、「各自避難」とか「各自防御」、あるいは「緊急生存確保」など、すでに安全ではないので、生存確保とか生命確保とした方がいいのではないかなど、いろいろみんなで検討した結果、最終的には「緊急安全確保」というネーミングになりました。

この避難情報の見直しについては、サブワーキンググループの中で、「今回変更した以上はもう当分の間変更しない、ファイナルアンサーで行く」という決意で、検討に検討を重ねた結果、この形で避難情報を出していくという結論が出され、それをもとに災害対策基本法の条文も改正されました。そして、この5段階の警戒レベルに合わせて、発していくメッセージの内容についても、既に図表も出来上がっており、多くの災害、防災関係者には周知されており、それをもとに一般の方々にも、防災訓練の際などに地道に伝えていくという作業が必要とされていると思っています。住民の皆さんに伝わりやすいような表現を目指して少しずつ見直しながら、伝えていくための努力を進めているところです。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。