奥さんが妊娠した。
いや、その前に僕もとうとう結婚したんだ。
夏にプロポーズして、来年にでも式を挙げようかとのんびり計画していたんだけど、妊娠が発覚したというわけ。
「おー!まじか!うわぁーすげぇー!!おめでとう!俺もおめでとー!」
なんていうリアクションしか取れず、なんとも恥ずかしいのだが、なんだか実感がないのが事実。
この僕が父親になる?
もちろん体に何の変化もなく、今までと何ら変わらない。
急に父親になるというのも、変な感じだ。
奥さんもまだ体に何の変化もないようで、同じような感覚らしい。
二人で「まじかぁ~、すげーなぁ~」と言い合う。
奥さんはお腹の中にいる我が子に「豆太」という名前を付けたらしく、しきりにその豆太に話しかけている。
「豆太ぁ~、あんたは男の子ぉ?女の子ぉー?」
なんとなく二人して男の子じゃないか?という感じがしてる。なんとなくだ。
僕は何をしたらいいのだろう?
とりあえず奥さんにさらに優しくして、栄養のあるものを食べさせなきゃな。
そして、名前を考えなくちゃな。
そうそう、豆太が大きくなったらキャッチボールしたいな、と思ってとりあえずグローブを新調してみた。
うんうん。いーぞいーぞ。
グローブを新調したらやっぱりキャッチボールがしたくなる。
一人で公園に行って壁当て。
家に帰ってもタオルを振って肩を作る。
今の僕はそんな事しかできないのだ。
奥さんも今までと変わらずよく笑ってる。
「豆太ぁ~今日も元気ですかぁ?」 とお腹に向かって話しかけてる。
僕もお腹に向かって話しかける。
「豆太ぁ~、お父さんですよぉ~、初めましてぇ~、これからよろしくお願いしまちゅ!」
さてさて、妊娠すると最初に訪れる壁が奥さんのつわりである。
そして、うちの奥さんにもそのつわりがやってくるのであった…。
(つづく)
大学時代に学んだ林学や山岳部での活動を通じ、カヌーや登山などの屋外スポーツやアウトドアライフを広める活動をしている。
イタリアンレストランで修行した経験を活かし、現在は世田谷区に民家を改造した予約・貸し切り制のカフェ「しゅとカフェ」を営む。
他、雑誌「PEAKS」「ランドネ」の山ごはんレシピの考案や商業施設イベントでのフードコーディネートを担当。
【趣味】
- DIY
- 楽器演奏。
- 自転車や徒歩で日本のみならず世界各国へ旅をすること。