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土曜日限定特製ラーメン

「今日はお父さん休みぃ?」
「うん、そうだよー。」
「やったー!じゃあお昼はお父さんが作るの?」
「おー。作るぞぉ!おい、遅刻するぞー!」
「行ってきまーす!!」

僕が小学生の頃の土曜日のやりとりである。
父親は仕事が忙しく、平日の帰りはいつも深夜。
土曜日が休みというのもあまりなかった。
だけど父親が土曜日の休みの日は決まって昼食を作ってくれた。
炒飯、ラーメン、焼きそば、カレーライスなどなど。
どれも子供の好きなものだ。
母親の料理がマズいとまで言わないが、健康を気にしてくれていたのか、子供にとってはいささか味が薄いのだ。
その点、父親の作る料理は油っこいし味も濃い。
男の味なのだ。

土曜日に朝起きてまだ父親が寝ていると、決まって昼飯を作ってくれるかどうかを確認しにいくのだ。
そんな土曜日は学校が終わると走って家に帰るんだ。

「たっだいまー!!今日のお昼は何ぃー?!」
「お!おかえり!今日は野菜たっぷり味噌ラーメンだぞー!!」
「やったー!!」
いつもは「手を洗いなさい!」と言われてから洗うのに、そーいう時はさっさと手洗いを済ませ、食卓につく。

「わー!ラーメンの匂いだー!腹減ったぁ!」
弟も僕の向かいで嬉しそうに待ってる。

「ほら!出来たぞぉ!お父さんの特製味噌ラーメンだ!」
「うわー!やったー!!いただきまーす!!」

なんてことない普通のインスタントラーメンなのだけれども、これが美味しいのだ。
野菜をトッピングする時間を計算してないのか、父親の作るラーメンはいつも少し麺が柔らかいのだけれども、またそれがいい。

「おい!こうやってソースをかけても旨いんだ。あと胡椒もな。」
「あ!僕胡椒かける!謙ちゃん(弟)はまだ小さいからダメだな!」
「僕もかける!」

案の定、弟はクシャミをしている。

「あー!美味しかった!次の土曜日は何作るのー?」
「そーだなぁー。お父さん特製炒飯にするか!」
「おー!特製だー!」
「よし!食べ終わったらちゃんと食器を流しに持って行けよー」

僕の家はほとんど外食をしなかった。
なので、育ったのはいつも母と父の料理。
なかでも父親の作る料理はちょっぴりパンチが効いていて好きだった。

僕が今料理人になってるのも、もしかしたらその影響かもしれない。
こんなことを書いていたら、久しぶりに父親の手料理が食べたくなる。

「あ、もしもし。洋介だけど…明日そっちに帰ろうかなぁと思ってるんだけどぉ。」
「お!そうか。じゃあ夕飯は食べるか?」
「あ、うん。そっちで食べようと思ってる。」
「お、じゃあお父さん特製カレーでも作るかな。カレーでいいか?」
「うん。カレーいいな。うん。いいな。んじゃお腹空かせて帰るからたくさんよろしく!」

明日はカレーかぁ?
そういや昨日カレー食べたなぁ。
それでもいいのだ。
僕は父親の作るカレーが好きなのだ。

「洋介!美味しいか?!」
と未だに何度も聞く父親の嬉しそうな顔を見るのも大好きなのだ。