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東京リバーカヤックツアー

僕には歳の離れた親友がいる。
名前は太陽。
僕の高校の同級生の長男で、生まれたころからよく知ってる。よく彼の家に遊びに行って遊んでいた。
彼に会うと名前のごとく太陽のように笑い、僕に抱きついてくる。次男のヒナタと僕の取り合いである。
彼の両親がどんな育て方をしてるのか詳しく知らないが、彼はすくすくとまっすぐに成長している。
毎回会うのが楽しみなんだ。

そんな彼も今年で中学生になった。
中学生になった彼に何かお祝いをしようと思った。
何かずーっと残るものがいいなぁと思って、ネットなんかで調べてみると、財布や時計、靴や万年筆。
あとは単純にお金が一番喜ばれるなんて書いてある。
まぁそりゃそうだなぁと思いながらも、なんか僕らしい贈り物をしたい。
色々と考えた結果、「東京リバーカヤックツアー」なんてプレゼントしたらどうだろうと…

たまーに友人を連れて行くところで、江東区の大島小松川公園からぐるーっとスカイツリーの真下を寄ってまた大島小松川公園に戻ってくるというコース。
「えーっ!東京でカヤック乗れるのー?」とか聞かれるんだけど、乗れるのだ。
そして、東京は運河が多くカヤックやカヌー、SUPなんかが結構気軽にできるところなんだ。わざわざ高速道路で車に乗って遠くに行かなくてもできるんだぜぃ。
そもそも運河っちゅうのは物を運ぶ為に使われたり造られたりした川。カヤックにはもってこいの規模の大きさで、川からの東京の眺めはまた違った趣で大変よろしいのだ。
渋滞もないしね。
道路に標識や信号があるように、川にも標識や信号がある。基本的に右側通行だし、川によって優先される船の種類も違ったり。小さな運河は「手漕ぎ優先」と書いてあって、つまりカヌーやカヤックはエンジン付きの船より優先されるのだ。
僕らがカヤックに乗ってるとエンジン付きの遊覧船がエンジンを止めてゆっくりと通り過ぎてくれたりする。
カヤックやカヌーを東京でするのに気をつけなくちゃいけないのが、舟を降ろす場所である。
ここ大島小松川公園は許可なく誰でも舟を降ろせる場所なので安心。場所によっては禁止されていたり許可を必要な所もあるので確認が必要かもね。

僕が今回使ったのはアルフェックのボイジャーという二人乗りのファルトボート。組み立て式のカヤックで普段は分解して押入れの中に入れてある。
組み立て方は簡単。テントを組み立てるのと同じような感じで慣れてしまえば15分くらいで組み立てられる。
太陽に「そのフレームをそこに入れて!」とか言って手伝ってもらう。めんどくさい工程も子供は楽しいみたいだ。
「しゅとちゃん!これホントに浮くの?すげぇー!」
「ちゃんと作らないと途中で沈没するからちゃんとやれよぉ」
「うん、わかった!」
「よし!出艇だ!」

カヤックは二人の息をそろえて漕ぐ。
「イッチーニー、イッチーニー」
「しゅとちゃん!うわっ魚だー!」
「アレはなんの看板?」
川から見る東京の眺めは新鮮である。
ここが東京のど真ん中か?と思えるほど静かで自然豊かである。
川に沿って遊歩道があって散歩してる人が手を振ってくる。
太陽も笑いながら手を振り返してる。
「太陽、楽しいかぁ?」
「うん!楽しい!」
「中学校入学おめでとーな。」
「うん、ありがと!あ、鳥だ!」

2時間ほど漕いでスカイツリーの真下まで来る。
カヤックから見上げるスカイツリー。川面に映り込むスカイツリー。
お昼になったので、川にカヤックを係留してご飯を食べに行く。
「母になんかお土産買いたい!」
と太陽はお土産を探しに。
「太陽、お金持ってるのか?」
「うん、お小遣い持ってきた。」
「お土産にお小遣い使ってもいいのかぁ?」
「うん、だって母が喜ぶからいいんだ。」
「そっか、じゃあしゅとちゃんもなんかお土産買おうかな。」

カヤックに戻り乗り込む。
「太陽疲れたろ。」
「うん、でも大丈夫。」
太陽の後ろ姿を見ながら、彼はどんな大人になるんだろうと…
夕方、大島小松川公園まで戻ってきてカヤックから降りた彼は少しなんだかたくましくなってる気がした。満開の桜が太陽を迎える。

帰りの車の中、太陽が色んな質問をしてきた。
「しゅとちゃんは、どうやってしゅとカフェをやることになったの?」
「ん?そーだなぁ?。なんかよくわからないけど、いつの間にかそーなったんだよなぁ?。色んな人に助けてもらってさぁ。だから太陽、友達は大事だぞお」
「そっかぁ。友達かぁ。」
「そーだ。友達だ。友達いなかったらしゅとカフェやってないなぁ?」
彼も彼で色々と考えてるようだ。
将来のこと、やりたいこと、恋愛のことなど。
僕も答えられるだけ答えた。
「でもなぁ太陽、なんか父や母に言いにくい事があったらしゅとちゃんに相談しろぉ。俺と太陽は友達だろぉ?」
「うん、わかった!」

家に戻ると靴を脱ぎ捨て母の胸に飛び込んでいった。
「ただいまー!!母ぁ!!楽しかったよ!これお土産ぇー!!」

今回は工事中で行けなかったんだけど、二つの川の水位を合わせる水のエレベーター、扇橋閘門を通るコースも面白い。
また太陽と行きたいなぁ。