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日本全国の貴重な発酵食品が世田谷に集結! 発酵デパートメント【前編】

下北沢の注目スポット「BONUS TRACK(ボーナストラック)」に「発酵デパートメント」というお店がある。発酵デザイナーの小倉ヒラクさんがオーナーを務めるこちらのお店は、日本全国の貴重な発酵食品が購入できる物販スペースに加えて、併設された飲食エリアでは発酵をテーマにした食事を楽しむこともできる。

2020年4月にオープンした発酵デパートメントは、どのような経緯で誕生したのだろうか。今回はオープン当初からのスタッフである、近藤里紗さんに話を伺った。

発酵イベントがきっかけで誕生

――オープンまでの流れを教えてもらえますか?

最初のきっかけは、2019年に渋谷ヒカリエで行われたイベント『Fermentation Tourism Nippon〜発酵から再発見する日本の旅〜』でした。

こちらの展示は、発酵デザイナーの小倉ヒラクが日本全国の珍しい発酵食品を紹介するイベントだったのですが、その会場内で行っていた商品販売が非常に好調だったことから、BONUS TRACKへ出店のお声がけをいただき、「発酵デパートメント」としてお店を出させていただくことになりました。

同店のオーナーであり、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん

――こちらのお店では物販のほかに飲食エリアも併設していますが、その理由を教えてもらえますか?

このお店では発酵食品を買ってお家で楽しむ以外に「発酵食品を体験する場」として飲食エリアも併設することにしました。発酵をテーマにした食事や発酵によって生まれる飲み物である日本酒、ワインなどを揃えています。

――オープンしたのは2020年4月ということは緊急事態宣言の頃ですか?

4月1日にオープンして、4月7日には緊急事態宣言に伴って飲食エリアを一時休業し、物販を中心に行うことになりました。そこからECサイトを予定よりも早くスタートさせて、さらに発酵食品が定期的に届くサブスクを始めたり、と色々なことに取り組みました。

――当時Twitterでお店の情報を見ていたのですが、大変そうよりも楽しそうだなと感じたのを覚えています

そう見えていたのなら良かったです(笑)。物販だけやっている時期に何度も足を運んでくださった女性の方がいたのですが、だいぶ後になってから『あの時は外から見てあなた達が楽しそうにしていたから何度も行っていたのよ』と言ってくださりました。大変な時期ではあったのですが、その言葉は嬉しかったですね。

――世田谷の人たちの反応はいかがですか?

最初は発酵マニアの方や海外の方が多く訪れることを想定していたのですが、オープンした時期がちょうどコロナ禍だったため、予定通りにはいきませんでした。ただ、その分、遠出ができない近所の方が足を運んでくれることが多かったですね。

気に入った調味料を見つけて何度も足を運んでくださる方、毎回違うお醤油を買って試してくださる方、最初は付き添いで来たのに試しに買ったら美味しくて次からは1人でも来てくださる方など様々な方が来てくださりました。

発酵デパートメントスタッフの近藤里紗さん

――物販の品揃えの特徴を教えてもらえますか?

品揃えの特徴は仲介業者などをなるべく通さずに直接メーカーに発注している点です。オーナーの小倉が発酵ツーリズムの中で出合った発酵食品メーカーやその他にもご縁があったところを中心に取り揃えています。

――発酵食品のセレクトショップのような非常に貴重な商品も多いですね

そうですね。大手スーパーなどに卸す規模ではない本当に小規模なところもあります。珍しいからこそ、他のお店にはないワクワク感が味わえると思います。発見する楽しさという意味では、セレクトショップよりも道の駅の方が近いかもしれません。

――発酵マニアから見るとこれが世田谷で買えるのか、という驚きの商品も多いですよね

そうですね。確かに貴重な食品も多いので、発酵マニアの方が喜んでいただける品揃えになっていると思います。その一方で、発酵に興味がないという方もふらりと立ち寄って購入してみたら美味しかったからまたお店に来た、という風に発酵マニアの方だけでなく、美味しい発酵食品が買えるお店として広がっていっていただけると嬉しいですね。

地方に眠る発酵食品を再発見する

――まだあまり知られていない発酵を生かした郷土料理はたくさんありますよね

青森十和田の郷土料理ごどを使った「ごど丼」

例えば、こちらのレストランの人気メニューのひとつに『ごど丼』というメニューがあります。『ごど』は青森の十和田で作られている郷土料理です。納豆に麹を加えて発酵させた食べ物なのですが、こちらは本当に家庭料理として作られているもので、その地方のスーパーに行っても、町の食堂でも食べることができません。

大豆食品なのですが、独特な酸味と旨味があってクセになる味として人気です。あくまで家庭料理で当時はレシピが公開されているものでもなかったため、もしかしたら、いずれ消えてしまったかもしれない地方の発酵食品をアーカイブして継承していく。それもこのお店の目的の一つにあります。

発酵文化を継承する、というと古いものを守っていくイメージがありますが、それだけではありません。例えば、漬物の年間消費量が減り続けている中で、新しい漬物に取り組んでいるベンチャーの食品を取り扱っていたり、あるいは、いま日本酒の新しい免許と言うのは国から交付されていないようになってしまったのですが、そんな中で日本酒を作りたいという理由で、フランスで日本酒を作っている新しい蔵元があります。そちらの商品を仕入れて販売するなど、新世代の人たちの商品も積極的に販売しています。

――発酵の昔と今が分かるお店なんですね。最後に発酵デパートメントの今後の展望を教えてもらえますか?

もともとのお店のコンセプトとして「世界の発酵集まれ」というキャッチコピーがありました。コロナ禍もあり、いまは日本の商品が中心になっていますが、世界中の発酵食品がこのお店で買えるようにしていきたいですね。

地域の魅力的な発酵食品を再発見して販売している、こちらのお店の物販コーナーではどんな商品を取り扱っているのか。後編では、同店の人気商品や注目商品についてお話を伺った。

【後編に続く】

発酵デパートメント

■住所
東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内

■URL
https://hakko-department.com/

※営業時間、休業日は以下のページにてご確認ください
https://hakko-department.com/blogs/magazine/20211109

■アクセス
小田急線、京王井の頭線「下北沢駅」徒歩4分

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