■世界に3つの国宝「曜変天目」
一般的に曜変天目というと、宇宙のような深い青色と、銀河のような星のような、虹をまとった星紋を思い浮かべるのではないでしょうか? しかし実際の曜変天目は光の種類によって色が変わってくるのです。白色系の強い照明の下だと鮮やかな青色が強く出ますが、今回の展示は自然光で曜変天目を観るというコンセプト。自然光に照らされると、深い青・青紫と深い黒、そして星々の瞬きのような細かい星が「宇宙」の黒い部分全体に広がっていました。星紋はもちろんのこと、虹色の光彩は見るものを引きつけ、器との距離があることなど忘れてしまうほど。実際の曜変天目はとても小さいのですが、見た目以上に吸い込まれるような美しさがありました。なお、太陽光下での鑑賞についてお尋ねしたところ、「焼き物は光で劣化しませんので、自然光での展示に最も向いているのではないでしょうか」との力強いお言葉をいただきました。
■鹿鳴館やニコライ大聖堂の生みの親、ジョサイア・コンドル作
美術館前の噴水を東に進むと、彌之助氏の霊廟があります。この霊廟は鹿鳴館やニコライ大聖堂を手がけたことでも有名な「ジョサイア・コンドル」によるもので、おそらくはロシア・ビザンティン建築様式がベース。建物正面の扉には中国の「二十四孝」のレリーフがあしらわれ、幅広い意匠が取り込まれていました。そして、霊廟前の巨大な鼎型香炉には魔払いの饕餮(とうてつ)文が描かれており、内側には寄贈した方々の名前が刻まれています。ちなみに饕餮とは中国の「なんでも食らってしまう化け物」で、転じて魔をも食らうとされるようになりました。また、手水鉢は大坂城の石垣にするために切り出されていた石で作られたそうです。
入口の左右には狛犬が鎮座。狛犬は向かって左手の「角の生えた吽形」が狛犬で、右手の「阿形」は獅子(ライオン)。しかしこちらは形で言うと大宝神社の狛犬、東大寺南大門の狛犬のどちらにも見えるので、阿形も吽形も、どちらも狛犬ではなく獅子ではないでしょうか。狛犬は遡れば古代エジプトやヒッタイトの「獅子の門」にも辿り付き、インドから中国を通って伝わったとも言われているので、お子さんの夏休みの自由研究として調べてみるのも楽しいですよ!
余談ですが、元々のニコライ大聖堂は関東大震災で破損・焼損してしまったため、岡田信一郎氏が修復にあたりました。その際、同じくジョサイア・コンドルが設計したこの霊廟のデザインを参考にしたそうです。
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爪に火をともすように、人生を転がり落ちてきたモホークカメライター。
グルメやサブカル全般、格闘技関係の情報収集に情熱を燃やし、朝から食べ物の写真を見ながらニタニタ笑っている変態でもある。
見た目はキワモノイロモノだが、中身は捨てられた子犬のように繊細。
なお、体の80%はラーメンでできています。