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世田谷歴史散歩 第1回 松陰神社のレア御朱印をもらいにいく

東急世田谷線に「松陰神社前」という駅がある。

この駅名の由来にもなっている、吉田松陰ゆかりの「松陰神社」では、月に一日だけ特別な御朱印をもらうことができるという。

一体どういうことだろう。そもそも世田谷と吉田松陰に一体何の関係があるのだろうか。

早速、調べてみることにした。

松陰神社と吉田松陰

吉田松陰といえば、幕末の教育者であり、思想家だった人物。特に長州藩(現在の山口県)で松下村塾の先生をしていた時には、当時の門下生から高杉晋作や伊藤博文などを輩出するなど、幕末の偉人の一人である。ゆかりの地といえばとうぜん松下村塾があった山口県の萩となる。

それでは、なぜ松陰神社が世田谷区にあるのか。

その理由を探ると、もともとあの場所には、長州藩主の別邸があったという歴史に行きつく。

その後、1859年に松陰は「安政の大獄」で処刑されてしまう。亡くなったのは29歳の時だった。その若さに改めて驚いてしまう。しかも、松下村塾で彼が教えた期間はわずか2年半だという。なんて密度の濃い人生だろう。

松陰が亡くなった4年後の、文久3(1863)年、薩英戦争があった年に高杉晋作などの門人によって、処刑されたものたちが眠る回向院にあった松陰の墓を、世田谷区の現在の松陰神社の敷地に改葬した。

その後、明治15(1882)年に松陰を祀る松陰神社が創建されたのだった。

ちなみに、実在の人物が亡くなって神様になる例は実は珍しくない。 乃木坂にある、乃木神社は明治の軍人、乃木希典(のぎまれすけ)を祀っており、鹿児島には西郷隆盛を祀る南洲神社(なんしゅうじんじゃ)もある。

毎月の月命日にもらえる特別な御朱印

さて、本題である特別な御朱印だが、こちらは吉田松陰の命日が10月27日だったことから、毎月の月命日である27日の御朱印だけ、松陰のシルエットが一緒に捺される。これが御朱印マニアの間では「レアな御朱印」として人気を集めているのだ。

ちなみに、ここ数年人気となっている御朱印。一体どういうものだろう、と思う方もいるかもしれないので、簡単に説明すると以下のようなものである。

  • 御朱印は参拝した証として神社やお寺でいただくもの。
  • 参拝後に社務所に御朱印帳を渡して、御朱印を受け取る。
  • 値段は500~1000円ほど。
  • 御朱印帳は訪ねたお寺や神社などで売っているものを購入する。また、最近は専門店があったり、ネット通販でもステキなデザインのものが増えている。
  • 御朱印は手書きの場合もあれば、判子のようになっていて捺してもらうこともある
  • 御朱印の人気スポットは、半日ぐらい並ぶ場合もある。

ということで、早速、令和元年の9月27日に松陰神社の御朱印をもらいに行ってみることにした。

平日でも人が多い月命日の松陰神社

東急田園都市線の三軒茶屋駅から世田谷線に乗り換えて、3駅で松陰神社前に到着する。この駅は駅前の小さな商店街に5年ほど前からおしゃれお店が増えており、世田谷区の散策スポットとしても人気を集めている。

駅から松陰神社までは、徒歩5分ほど。かなり大きな鳥居をくぐると、きれいに整えられた参道がある。神社の中には森のように木が生い茂っているところもあるが、ここは非常に明るくて、晴れやかな気持ちになってくる。

途中には松陰の像があり、掲示板には9月の「松陰先生の言葉」が貼られている。幕末好きにはたまらないスポットだ。

社務所に着き、500円を支払い御朱印を依頼すると、番号札を渡される。少し待つようだ。

境内には同じように待っているらしい年配の女性が20人ほどおり、その後も次々と人がやってくる。やはり月命日の御朱印は人気のようだ。

待っている間に境内にある復元された松下村塾を見学する。想像以上に狭い。だが、きっとこの距離の近さこそが松陰と門下生の距離を縮め、彼らに幕末の日本を動かす熱を与えたのかもしれない。

さらに、そこから社務所の奥にある松陰のお墓も見学して、戻ったころに番号を呼ばれた。

受け取った御朱印を見ると、そこは松陰のシルエットが。令和元年の文字に、時代の流れを感じる。

幕末は、一般的に黒船来航の1853年から戊辰戦争の1869年までの16年間のことを指す。16年ということは、平成を30年と考えると、ほぼ半分ぐらい期間に起きた出来事だったのだ。

そのあまりに圧縮された歴史に驚きながら、クールダウンするように松陰神社商店街を通って駅へと戻る。かき氷店に、発酵食品の専門店、おしゃれなカフェに人気のパン屋が立ち並ぶ。

おしゃれなお店と幕末の歴史が一気に楽しめる、松陰神社前はかなりおすすめのスポットだ。

ちなみに、10月最終の土日には毎年「幕末維新まつり」が開催され、奇兵隊や新選組の衣装を身にまとった人たちの行進などが行われる。

維新まつり期間中の御朱印は、御朱印帳に記入する形ではなく、期間限定の見開きサイズの大祭り御朱印符の頒布となる。

今年は、10月26、27日が開催日だ。ぜひこの機会に松陰神社に足を運んでみてはいかがだろうか。


松陰神社データ

■住所
東京都世田谷区若林4-35-1

■アクセス
東急世田谷線「松陰神社前駅」下車、徒歩約3分。

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