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今回の専門家
山本 耕平 氏
株式会社 ダイナックス都市環境研究所
代表取締役 会長
災害時のマンションのトイレ事情
高層マンションのトイレは大変だというお話をしましたが、新しいマンションは耐震性があるので、そういうマンションにお住まいの方は避難所に行く必要はなく、自宅で避難するように言われ、水や食料の備蓄を勧められていますが、これにトイレもぜひ加えておいてください。マンションは、配管が縦に通っていますので、水が通ったからといって上で水洗トイレを使うと、縦管のどこかに詰まりがあったり、ヒビが入っていると、その所から汚水が漏れ出してきたりすることがあります。戸建の住宅の場合は、マンホールが飛び出しているような状況でなければ、水洗トイレは大体大丈夫だと思いますけれど、特にマンションは、縦に人が住んでいますので、管に割れなどがないかを確認してから水を流すように、特に注意が必要です。
実はこれはマンションの業界でもいろいろマニュアルなどを作ってPRしていますが、特に大きなマンションの場合は、大きな地震があったときにはきちんと点検をした上で水を流すようにしないと大変なことになります。そのためにもマンションの防災備蓄用には、トイレ対策として、1週間分あるいは10日分の備蓄をしておくことが大切です。
避難所に行けば、仮設トイレで何とかなると思われているかもしれませんが、仮設トイレは備蓄がほとんどないため、すぐには来ません。工事現場やイベントなどでも仮設トイレはよく見かけますが、メーカーやレンタル会社などでも災害用にたくさん備蓄してあるというものではありませんので、どこかで災害が起きるといろいろな所に保管してあるものを集めて運ぶということになっています。すぐにたくさん持ってきてくれと言われてもなかなか手配ができないという大きな問題があります。特に自治体の職員の方たちには、よく知っておいていただかないといけない話です。
雨水を備蓄用に
戸建ての住宅の方は水をためておけば、トイレの水として使うこともできますので、お風呂の水をためておくのも一つの方法です。私は、家に200リットルの雨水タンクというのを付けています。これは、雨水をためるドラム缶くらいの大きさのタンクですが、今園芸用など、いろいろなものが売っていますので、そういうのもちょっと用意して付けておくと、雨が降ると水がたまります。この水は、トイレにも使えますし、実は雨水というのはきれいな水で、飲むこともできます。集水する所の屋根が汚れていたりすると水は汚くなってしまいますが、雨そのものは汚いわけではないので、雨水も上手に集めて、上手にためると飲用水にすることもできます。私は雨水を活用しようという、NPO「雨水市民の会」の理事長をしていますので、随分長い間この雨水の利用を進めています。わが家では、屋根から雨樋で水をためています。
「雨水市民の会」では、この雨水が災害時にも、あるいは治水のためにもいろいろ役に立つので、都市の水源として雨水活用を進めよう、ということでやっています。災害時には、雨水に多少ゴミとかがあったとしても、例えばコーヒーのフィルターでろ過するなどして煮沸すると普通に水として使えます。私はポット型の浄水器で中空糸膜のフィルターを使っているものでろ過しています。これを使えば、実際に飲むことができます。われわれの仲間に保健所の人がいっぱいいますので、そういう人たちがいろいろ調べて、細菌もちゃんと取れるとかそういうことも分かっています。ですので、雨水タンクと浄水器があると飲み水はあまり心配しなくていいなと思っています。
もちろん生活用水として普段は園芸用の水に使っています。塩素が含まれていないので植物の生育にも良いので、ぜひ雨水利用をしてみてください。自治体が、設置のための助成金を出しているところもあると思います。雨水タンクは市販のものがたくさん出ていますし、自分で工作して、雨樋から縦樋につなぐことも出来ますし、ためておいて、普段は庭の散水などに使って、いざというときには飲料水にもなるので、ぜひ考えてみて下さい。インターネットで検索などをすれば、簡単に調べられます。大規模な雨水利用としては、例えば東京でいうとスカイツリーなどでも大きなタンクで雨水利用をしていますが、家庭で使うものは、「雨水タンク」で検索をすれば出てくると思います。
私たちの「雨水市民の会」という会は、東京の墨田区向島という所に事務所があるのですが、そこは海抜0メートルより低い所で、雨が降るとすぐ水に浸かってしまうような所です。消防車も入れないような狭い所があるので、まちの中にいくつも雨水を貯留する所を設けて、「路地尊(ろじそん)」と呼んでいます。水をためて、その上に手押しポンプを付けたものを行政が作っていて、井戸水の代わりに、初期消火の時にその水を汲んで、バケツリレーで水を運んで消火しようという目的で作られたものです。向島や京島などに行くと結構そういうポンプが付いているものがあって、コミュニティでそれを管理しています。僕たちはそういうコミュニティの方たちと一緒に家庭の雨水タンクの普及を進める活動をやっています。
※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。
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