産婦人科の中って男にとってちょっとなんだかソワソワするっていうか、独特な緊張感がある。
圧倒的に女性の方が多いし、まぁごく少数の男性もいるが、それも僅かだ。
なんだか女性用の下着屋に付き添いで行ってる感覚に似てるかもしれない。
まぁ確かに付き添いであるし。
いや、付き添いなんて言うと怒られるかもしれない。
今日は奥さんの妊婦検診についてきた。
奥さん曰く今日あたり性別が分かるんじゃないかってことで、ちょっとワクワクというかドキドキしてる。
豆太は今19週目に差し掛かったところだ。
奥さんは豆太の胎動を感じられるようになってる。
僕自身に何も変化は感じられないが、奥さんのお腹は少しずつ大きくなって、なんとなくだけど顔つきも母親っぽくなってる気がする。
そう、僕には何も変化は感じられないのだ。
当たり前のことなんだけど、これは結構深刻な問題だと思うのだ。
奥さんは毎日お腹の中で子どもを感じ、少しずつ母親になる準備をしてるのに対し、僕は何も感じられないのだ。
男性は女性に比べてブランクがあるのだ。
それはどうしても埋められない問題だ。
そのブランクを埋めようと僕は毎日イメージしている。そんなことくらいしか出来ない。
最近僕は産まれてくる子どもをイメージして、庭作りをしている。
子どもが楽しく遊べるように芝生も張った。
ここにクローバーなんかあれば、しゃがみこんで四つ葉なんか探すかなぁ?とクローバーの種を撒いたりした。
そんなことして、奥さんとのブランクを埋めようと努力してる。努力してるというか楽しんでる。
なんかそんなことが実は大事なんじゃないかなぁと思って。
話は産婦人科に戻る。
この病院は奥さんが普段働いてる病院で、何度か送り迎えはした事はあるが、入るのは初めてである。
先生や同僚達に挨拶も兼ねてなんだけど、やっぱりちょっと緊張する。
奥さんの名前が呼ばれた。
僕「あ、夫ですぅ。いつも妻がお世話になってますぅ。」
先生「いえいえ、こちらこそぉ~。いつもお世話になってますー!今日は旦那さんもご一緒ですか?よろしくお願いします。」
奥さんがベッドに横たわってエコーを当てた。
画面にそのお腹の中らしきものが写る。
『おおぉ~なんかすげぇ。わっ、人がいる!』
先生「お、順調ですねぇ。ここは○○センチ。ここは○○センチ、えーっと、そーだなぁ、正常値ですねぇ…。」
僕「あ、あれチンチンですか!?男の子かー!!!」
先生「いや、これはヘソの緒ですねぇ。笑」
僕「あ、そーなんだ。汗」
先生「お!この子は女の子ですねー。あれ?言っちゃって良かったんですよねー?」
僕「あ、女の子なんだぁ~。笑」
そっかそっか、豆太は女の子かぁ。
男の子でも女の子でもとにかく元気ならどっちでもいいぞぉ。そっかそっかぁ。女の子かぁ。
実は夫婦ではてっきり男の子だと思っていたのだ。
いわゆる安産祈願とかの神社やお寺で、占い的なモノを何度かしてみたんだけど、どこでも男の子と占われたからね。
でも豆太は女の子だった。
女の子は優しいし可愛いもんなぁ。
僕はまず女の子の父親になるのだ。
先生に挨拶をして病院を出た。
奥さん「女の子だったねぇ~。」僕「うん、女の子だったなぁ~。」
奥さん「占いぜんぜん当たらなかったねぇ~。」
僕「そーだねぇ。ぜんぜん当たらなかったねぇ。そしたら女の子の名前を考えなくちゃなぁ~。」
奥さん「うん。一緒に考えようね。」
母親のように笑いかける奥さんに、僕は父親のように笑いかけてみた。
大学時代に学んだ林学や山岳部での活動を通じ、カヌーや登山などの屋外スポーツやアウトドアライフを広める活動をしている。
イタリアンレストランで修行した経験を活かし、現在は世田谷区に民家を改造した予約・貸し切り制のカフェ「しゅとカフェ」を営む。
他、雑誌「PEAKS」「ランドネ」の山ごはんレシピの考案や商業施設イベントでのフードコーディネートを担当。
【趣味】
- DIY
- 楽器演奏。
- 自転車や徒歩で日本のみならず世界各国へ旅をすること。