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世田谷の住宅街にあるクラフトビール醸造所「RIOT BEER(ライオットビール)」

ライオットビール_mv

世田谷区の砧に「ライオットビール」というクラフトビールの小さな醸造所がある。

醸造所ではあるが、カウンター席が10席ほど用意されており、つくられたビールを飲むことができる。夕陽が見え始める頃になると、同店のクラフトビールを求めてお客さんが一人、また一人と訪れ、お店の人と会話をしながら、ゆっくりとグラスを傾ける。

取材のために訪れたが、初めての来店だったので店員の方に好みの味を伝え、おすすめされた一杯を飲んでみる。深いコクと豊かな味わいに思わず、「ああ、美味い」と声に出してしまった。

一体どんな人がこのビールを作っているのだろうか。こちらのビールの醸造を担当するヘッドブルワー( 醸造 の責任者)である江幡貴人さんに話を伺った。

イギリスのパブで出合った一杯のクラフトビール

ライオットビール_江幡貴人さん
ソフトウェア会社から独立してクラフトビールづくりの道に入った
江幡貴人さん。

そもそも江幡さんとクラフトビールの出合いは、大好きなサッカー観戦がきっかけだったという。

江幡さんは国内だけでなく、海外のサッカーも見に行くほど熱心なサッカーファンだった。そんな江幡さんがイギリスを訪れた際、現地のパブで飲んで衝撃を受けたのが、その町で作られているクラフトビールだった。

「日本のビールは有名なメーカーが何社かあって、お店に飲みに行ったらそのどれかを飲む、というのが当たり前ですが、そのイギリスのパブで飲んだクラフトビールは、その地域だけで作っている、名前も知らなかったビールなんですけど香りも良くてコクもあって美味しい。こんな世界があるんだと驚きました」

その後も、江幡さんはサッカー観戦でヨーロッパに行くたびに現地のクラフトビールを味わい、自分の好みの味を探し続けた。やがて江幡さんは味わうだけでなく、自分でもクラフトビールが作りたいと思いはじめたという。

醸造所を住宅街に作る!?

江幡さんは、まずクラフトビールの作り方を学ぶために、クラフトビールの醸造所である「十条すいけんブルワリー」で修業をさせてもらうことにした。そこで知ったのはビールづくりの意外な事実だった。

「ビールを作ってる、というと楽しそうなイメージがありますが、現実はすごく体を使うことを知りました。小麦は大きな袋に入った重いものを運ぶし、温度管理があるからクーラーが使えず、夏は暑い中で汗だくになりながら、冬は寒い中で凍えながら重いものを持つ。完全に体力勝負でしたね」

へとへとになりながらビールづくりを学ぶ一方で、物件探しにも着手していた。場所は世田谷を中心に探していたが、なかなか良い物件は見つからなかった。

その原因のひとつが、ビールの醸造所という存在だった。江幡さんが考えていたのは、ラーメン店の厨房程度の「マイクロブルワリー」と呼ばれる、小さな醸造所だったが、建物を持つ大家さんは、工場のような大きなタンクを想像し、「ビール醸造所なんて」と話が進まなくなってしまうことが多かったという。

諦めかけた時に見つけたのが現在の場所だった。住宅街の中にありながら、五差路の角にあり、人も車も通る人通りのある場所。広さもイメージに近かったという。

「うちはあくまで醸造所がメインで、その場でビールも飲めるお店にしようと思っていた。そういう意味ではこの場所はピッタリでした」

こうして、2018年4月、ようやくライオットビールがオープンしたのだった。

ライオットビール_外観

クラフトビールの魅力は自由なところ

江幡さんにクラフトビールづくりの話を聞くと、ビール酵母と麦芽とホップの組み合わせの話になり、酵母の種類やそれぞれの割合や入れるタイミング、さらに温度を変えることで、自分が目指したい味を作り出せるという。

話を聞いていると、ビールづくりの試行錯誤はまるで理科の実験のよう。ひょっとして理系ですか?と聞くと、やはりそうだという。

「学生時代はずっと理系でした。その後の就職先もソフトウェア会社のエンジニアという『理系のモノづくり』をしていました。クラフトビールづくりは完全に理系ですね。ビールづくりは科学だと思います」と江幡さんは笑顔を見せる。

そんな江幡さんにクラフトビールの魅力を聞いてみた。

「クラフトビールは自由なんですよね。コーヒーとビールを組み合わせてみたり、変わったものだとカツオ節をビールに入れたり。クラフトビールはまだまだやれることも多く、色々と試して味を生み出すことができます。そういう自由なところが好きですね」

さらに今後のビールづくりの目標についても聞いてみた。先ほど味わった感じでは、すでにかなりのレベルに達していると思われるが、そのことを伝えると、江幡さんは意外なことを言った。

「自分の中ではまだまだですね。やはり僕が目指すのはイギリスのパブで飲んだあの味です。試行錯誤しながら少しずつ近づいている感じです」

2020年以降は新型コロナウイルスの感染拡大もあり、飲食店にとっては痛手が続いた。ライオットビールにとってもそれは同様だった。特に沖縄や京都などの観光地にある主要な卸売り先がストップしたことで、大きな影響を受けたという。その一方でありがたいこともあったそうだ。

「うちは住宅街の中にあるので、遠出ができない近所の方が『前から気になっていた』と足を運んでくれることが増えました。砧の周辺には海外に住んでいた経験がある人も多く、懐かしい味だ、と喜んでくれる人もいました。世田谷の地で何ができるか、ということを考えているので、そうした地域の人との出会いは嬉しかったですね」

イギリスのパブで飲んだ一杯のクラフトビールが江幡さんの人生を変えたように、世田谷で生まれたこのお店のビールがいつか誰かの人生を変えるかもしれない。

世田谷生まれのクラフトビールを、ぜひあなたも味わってみてはいかがだろうか。

ライオットビール_通販
ボトルのビールについてはWebでの販売も行っている。
https://riotbeer.theshop.jp/

ライオットビール

■住所
東京都世田谷区砧5-11-10

■営業時間
月・水・木・金 15:00〜21:00(ラストオーダー)
土・日・祝 13:00〜21:00(ラストオーダー) 
火は醸造日のため、10:00-16:00 瓶ビールのみ購入可

※新型コロナウイルス感染予防対策のため、現在の営業時間の詳細は以下のサイトをご確認ください。

■URL
http://www.riotbeer.biz/

■アクセス
小田急線祖師谷大蔵駅徒歩7分

世田谷クラフトビール巡り

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