元仲卸の目利きだからこその、新鮮素材。
昔からの慣習も、新しい取り組みも、どちらも大切にして寿司を握る。
「鮨あらい」さんは、そんなお店です。
■北部市場唯一の熟鮮魚取扱店 「鮨あらい」とは?
「鮨あらい」さんは、北部市場内の食堂街にある唯一の寿司店。そして、川崎北部市場水産仲卸共同組合が明治大学&市内のベンチャー企業と産学連携で展開する新ブランド「発酵熟成熟鮮魚」の取扱店でもあります。今お店が入っている場所には以前北部市場の水産組合理事長が寿司店を出していて、そこをたたむ際に「市場に寿司屋がないのはよくない」ということになり、新井隼人(あらいはやと)さんが出店に至りました。
朝の3時には仕込みを開始する新井さんが一番気にかけているのは、まず新鮮であること。鮮魚と熟鮮魚は完全に分けて提供しているので、新鮮な魚介が好きな方はそれだけを存分に楽しめます。ただやはり、北部市場唯一の熟鮮魚取扱店としては、「熟鮮魚の三貫握りと通常の鮮魚との食べ比べはして欲しいですね」と熱く語ります。後述しますが実食すると脂の風味と食感がまるで違うため、食べ比べを強くおすすめします。
■修行先は有名店「逸喜優」、温故知新で育った様々なスキル
新井さんは、元々北部市場内で仲卸として働いていました。寿司の修行は結婚してからで、あざみ野にある人気寿司店「逸喜優」さんにて12年腕を磨いたのです。実はこちら、奥様のお父さんのお店。北部市場で仕入れをする際にも、仲卸での目利きのスキルを大いに活かしたことでしょう。
「逸喜優」さんへ修行へ入る前に「一度は他の店でも修行した方がいい」と入った修行先では、まず接客を褒められたのだとか。確かに取材中に訪れたお客さんへの対応も、物腰柔らかくしっかりしたものでした。頑固一徹な店でありがちな「俺の寿司を食べに来てるんだろ?」は、今の時代にそぐわないのでは……と考えているのもそんな経験からかも知れません。修行先のお店では寿司の握り方から空気の入れ方まで全部教えてくれて、「見て覚えろでは10年かかるけど、俺の横に付いていれば1週間で仕込んでやる」と言ってもらったそうです。
また、分からないことのメモをとっていたら「それも必要ない」と言われたそう。「100回質問をしてもいい、101回目には覚えるだろう」という方針なのです。玉子焼き一つとっても横に付いて教えてもらえて、分からないことがあったらすぐに指導を受けられる環境がありました。魚の下ろし方も種類ごとに教えてもらって、その人のおかげでかなりのスピードで上達したそうです。だから自分も、人に教える時には同じように「見て覚えろはやめよう」と思っているとのこと。「もちろん古いものも重要だけど、握りが上達したのはそういう人がいてくれたおかげです」、そんな感謝の言葉が聞こえてきました。
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爪に火をともすように、人生を転がり落ちてきたモホークカメライター。
グルメやサブカル全般、格闘技関係の情報収集に情熱を燃やし、朝から食べ物の写真を見ながらニタニタ笑っている変態でもある。
見た目はキワモノイロモノだが、中身は捨てられた子犬のように繊細。
なお、体の80%はラーメンでできています。