東急田園都市線の用賀駅にプロレスファンが集う焼き鳥店がある。
その名は「市屋苑(いちおくえん)」。オーナーは、元UWFインターナショナルというプロレス団体の経営陣の一人、鈴木健(すずき けん)さん。
そしてこの店で現在週に4日間、焼き鳥を焼いているのが、同団体所属レスラーだった安生洋二(あんじょう ようじ)さんだ。
なぜ用賀にこんなお店があるかの詳細は、以前書いた「用賀とプロレスの意外な関係」を読んでもらえればと思うが、かいつまんで言うと、かつて用賀にプロレス団体の事務所があったのだ。その団体は、高田延彦さんを中心にしたUWFインターナショナルという団体であり、彼らを有名にした出来事が「1億円トーナメント」の開催だった。M-1グランプリですら1000万円の賞金なのに、大盤振る舞いの1億円を賞金にして、各団体に参加を呼び掛けたのだ。
結局、どの団体も参加せず、大会は不成立に終わり、1億円の借金だけが残ってしまった。それを返済するために始めたのが、この「市屋苑(いちおくえん)」というお店だった。
プロレスファンにとっては「あの1億円トーナメントか!」となるお店であり、地元の人には美味しい焼き鳥店として親しまれている、こちらのお店を訪問することにした。
プロレス好きの落語家と訪れた焼き鳥の名店
今回の企画は、当初「有名人と行く世田谷のお店」という内容だった。
例えば、落語家がよく行くお蕎麦屋さんを教えてもらい、江戸情緒を味わう、というイメージだ。
だが、お願いした落語家がプロレス好きだったことから、「用賀の市屋苑に行きましょう」という話になったのだ。
その結果、落語の話と、プロレスの話と、市屋苑が混ざりあうバトルロワイヤルのような展開になってしまった。
時間の経過としては来店後2時間ほどで安生さんがテーブルに登場、安生さんが帰り、鈴木健さんが登場、という流れになっている。
安生さんと一緒に海賊のような大きなジョッキでハイボールを飲んで以降はややあやしいが、できるだけあの夜のやりとりを落語家へのインタビュー編と、プロレス編に分けてお伝えしたいと思う。
出囃子がUWFの落語家・鈴々舎馬るこ(れいれいしゃまるこ)
さて、今回登場してもらった落語家は、出囃子が「UWFのテーマ」というかなり偏ったプロレスファンである鈴々舎馬るこ師匠である。
2017年3月に真打になった鈴々舎馬るこ師匠は、「イタコ捜査官メロディー」など変わった創作落語もやりつつ、古典落語の改作を中心に初めて落語を聞いた人から通までをうならせる、爆笑タイプの落語家。
私が馬るこ師匠を「すごい!」と思ったのは、まだ真打になる前の「二つ目」と呼ばれる修行時代、池袋演芸場の出番の時に急に婚姻届けを出して、「受け取った人は僕と結婚してください!」と叫んで会場に投げて、年輩の男性が拾って二人で見つめあう、という場面を見たときだった。
そんな破天荒な一面がありつつ、落語家にとってM-1グランプリに匹敵するといわれる「NHK新人演芸大賞」も受賞している実力派である。
現在は笑点の若手大喜利に出演するなど、有望株として知られ、今後のさらなる活躍が期待されている。
さて、19時半、用賀で待ち合わせをした我々でろかるスタッフと馬るこ師匠がお店を訪れる。
店内にあるプロレスのポスターをじっくり見た馬るこ師匠。
ようやく席につくと、まずはプロレスとの出合いについて聞いてみることにした。
【お笑い芸人から落語家への転身~馬るこ師匠のインタビュー編に続く】
市屋苑
■住所
東京都世田谷区用賀4-14-2 2F
■電話番号
03-3707-3223
■アクセス
東急田園都市線用賀駅から徒歩約5分
世田谷とプロレスシリーズ
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1978年生まれの編集者。世田谷区用賀在住。子どもは長男(7歳)、次男(4歳)の二人。歴史と散歩と釣りが好き。最近は子どもと多摩川で釣りをしたり、プロレスの歴史を調べることにハマっている。